この社会がどうしても許せなかった頃の話#9
※前回
私は人工DNAの研究開発職に就いた。
私は毎日、厳重に密閉された建物の研究室で、白衣を着る。
滅多に無いホワイトな環境を手にした事を肌で感じていたから、
この時の私はかなり浮かれていたと思う。
それはもう、鬱陶しいほどに。
最初は知識こそ無かったものの、データの分析、アプリケーションの開発手法を身に付けた。
本当にこの会社が好きになっていた私は、1年ほどで、それまで人が目視で判断していた「人工DNAの成分分析、品質判定」を自動でやってくれるアプリケーションをリリースした。
優しい上司からは「俺達は昔それやろうとして無理だった。そんなん作れないよ。もう教えることはない」とか言われたりして、最高だな!って生活を送っていた。
しばらくして、
上司が辞めることになった。
理由は「給与が低い」からだった。
確かに、技術者に払う給与としては安かった。
私はこの頃、人間関係が良ければ全て良しだったから、不思議に思った。
・・・私には唯一、この会社で恐れていたことがあった。
辞めた上司の更に上に立つ人物。
上司Nとしておこう。
この上司Nは、わかりやすく言うと、その時持っていた印象は”表情があまり変わらない、無愛想なおじさん”だった。
そう、接客業とかやってる時はあまり話したくないタイプの人類です。
私はこのタイプの人間とは非常に相性が悪い
そして、私が入社してから、上司Nの下についていた社員が一人、いつの間にか消えていた。
この会社は、離職率が非常に低い。
退職する場合は皆、送別会が開かれて、明るい場が設けられている。
しかし、消えた社員については、何も言及が無かった。
まだよく知らない人に悪い印象を持つのは良くないけど、
こういう時の悪い勘が外れたことは無かった。
私の直属の上司が辞めてからは、自動的に私が製造システムの管理者となった。
管理体制集約の為、私は親会社に昇格して引き上げられ、上司Nが私の上に就くことになった。
私の直属の上司が、このヤバそうな上司Nになるということだ
見かねたのか、それまで静観していた情報通な私の先輩社員が、
私を人が来ない部屋に連れ込んだ。
先輩「Nの部屋はヤバい。あの2人はまともな人間じゃない」
上司Nは情報システム室長だった。その部屋には、もう1人だけ社員が居た。
社員Jとしておこう。
2人体制だ。
先輩からは「上司N、社員Jが居る部屋は、この会社の触ってはいけない部分だ。」
と、教えられた。
私には、選ぶ権利が与えられた。
上司Nの部屋に移動するか、
所属だけ親会社で、席は子会社に残るか
後者を選んだ。臆病だから。
結論から言うと、上司N、社員Jは
2人してパワハラだった。
「すみません、今お時間よろしいでしょうか?」って声をかけた時の返事は必ず
「あぁーん?なんだテメェ(睨む)」
がデフォだった。ほんとです。
びっくりして質問内容飛ぶよね。
これが怖いって周りの人に言っても「あー、あの人はそういう人だから!」と、みんなに流された。関わりたくないんだね?
社員Jはね、超ヒステリックおばさんだった。
席は子会社だったけど、毎週親会社の上司Nの部屋に呼ばれるし、その度にダブルで怒鳴られるので、もうほんとおしっこ漏らしそうだった。
これもし普段の席も同じ部屋に移動してたら50回くらいおしっこ漏らしてたよ。
私は耐えかねて、子会社の偉い人を味方につけようと思った。
私は泣きながら偉い人に相談した。
偉い人「あー大丈夫大丈夫!きっとNさんは寂しいんだよ。
話したらわかってくれると思う!今内線で君の悩み伝えるから!」ガチャッ
おいバカ!!!心理戦下手くそか!?!?!?
私「待って・・・(ガチ泣き)」
偉い人「わかってる!言ったらもっと立場が悪くなるかもって思ってるんでしょう?こういうのはね、腹割って話せば良くなるもんだよ!」
偉い人、内線で上司Nへ色々と伝える。
おしっこ漏れそう。
偉い人「ほら、わかってくれたよ!大丈夫!ほんとはNさんもJさんも優しいんだって!」
偉い人だけがハッピームードになり、顔がびっしょびしょの私も席に戻る。
メールボックスには上司Nから2通、メールが来ていた。
「こっち来れる?」
「まだ?」
#10に続きます。