(終)悩み癖を最低な方法で排除するに至った話#3
【注意】#1、#2を読んでいないと、半分くらい狂言で構成された意味不明な記事です。
前提として、当時の極限状態の思考をトレースして書いています。
この1日以外では、当然こんな事は考えていません。
この日、私は確かに魂が世界よりも速かった。
厳密には、物理的に何かの速度が高かったわけじゃないけど。
だって、世界があまりにも遅く見えたから、相対的に私が「速い」と思うのが適切。
それ以上に的確な表現は、言葉では難しい
私のが速いからかわからないけど、世界の景色は何故かいつもより何倍も白かった。
駅のホームに居る大量の人間の動きを全て察知することが出来、一瞬一瞬で、今私に目線を向けている人間が何人居るのかを、瞬時に理解できた。
だって、世界よりも私のほうが「速い」から。
今此処にいる全員、私よりも「遅い」から。
会社に着いた。
午前中の仕事については、記憶が飛んでいる。
視界がバチバチと白くて、なんだか息がし辛かったと思う。
お昼ご飯。
味覚が完全に消えていた。
味がとても薄い食べ物について「味がしない」という表現をするけど、
本当に味がしないのはそんなに生易しいものではなく、米がまるで消しゴムのカスを固めた物を食べている状態だった。
味がしないっていうのは本当に不味くて、脳が異物と判断する。
吐きそうだった。
今思うと、歯触り、舌触りを感じる部分もおかしくなっていたのかもしれない。
何度も飲み込む時に逆流しかけたけど、頑張って食べたと思う。記憶が曖昧。
その他の食材の記憶等は飛んでいる。
ちなみに空腹感、満腹感は完全に麻痺していた。
昼過ぎ。
先輩と打ち合わせをしたけど、ここから様子のおかしさはピークに達した。
うまく喋れなかったし、手足も少し震えていた。
あと寒かった。
視線も安定しない。
目ってどこに向ければ良いんだっけ。目の位置がわからない。
歯は氷で、口に舌の形をした冷たいガムが入ってる。
自分が「速くなっている」時間が長すぎて、全ての神経を酷使した結果無理が出てきたんだと思う。
なんとかゆっくり喋って誤魔化して打ち合わせは済ませたけど、
私が不審な状態だった事は先輩も気づいていたかもしれない。
何かが私に対して変わらず輝かしい祝福を与えてくれていたけど、
その道筋に私の肉体が段々とついていけなくなった。
なんなら眩しくて、遮りたいと感じた。
このあたりから、明らかに仕事のパフォーマンスが下がったと思う。
乗るべき速さについていけなくて集中できない。チカチカと眩しい。
耳鳴りが10種類ほど両耳から聞こえるのでトイレに逃げる。
まるで宝石店の多重モスキート音
記憶が飛ぶ。
夕方。
相変わらずパワハラ上司、もう一人同じくパワハラ気質のヤバい先輩にダブルで詰められたり、
席に戻っても陰湿なメールがぽつぽつと飛んできていた。
なんとも無かった。
だって私は祝福を受けていて、少し遅くなったけど、まだこの人達よりずっと「速い」し、私は無敵そのものだから。
当たり前だけど、人間にそんな底なしの力なんて無い。
たぶん、この時点でとっくに身体も心もギリギリだったのだと思う。
定時直前、パワハラ上司から「まぁこう言ってくるだろう」って思っていた通りのメールを受け取った。速くて先回りができるからね。
そのはずなのに、予想通りの文字列を見た瞬間、
過呼吸と激痛が身体を襲った。
この凄まじい反動で、速かった私は等速に引き戻され、世界の色も戻った。
今まで誤魔化されていた精神的苦痛や疲労、不調が全て、なだれ込んで来た。
私はこの世の終わりのような激痛と吐き気に耐えかねて、このメールをスルーして退勤した。
そこから家に帰っても、3時間くらいは激痛と吐き気が治まらなかった。
一人暮らしだし極限状態だったので頭が回らなかったけど、正直、救急車呼んだほうが良かったと思う。
この時はもう速度の力関係は反転していて、私は世界よりも明らかに遅くなっていた。
あと何故か、すべての音が低く聞こえた。
興味本位で好きな曲を何曲か流したけど、全部キーを下げたバージョンに変化していた。
低音に聞こえるのは、咳止め薬とか、てんかん用の薬?の副作用によくあるらしい。不思議だったけど、症状が収まるまで楽しかったり怖かったり、混乱した。
この日は金曜日だったので、本当に助かった。
それからは懲りて薬の服用を辞めて、パワハラ上司に3ヵ月耐えたけど、次の職場のあてを見つけて退職。
しかし、その職場でも悪い部署に配属されて散々いびられたりと、本当に大変だった。
私は人の悪意に気づきにくいので、職場選びが致命的に下手なんだと思う。
当時の「世界より速くて無敵な自分」な思考パターンは大切に覚えていて、今でも度々参考にさせて頂いている。
私は元々小心者で、すぐに慌てて冷静さを欠くので「強い自分を自分の中に飼う」というのは本当に重要で、必要なことだった。
あの時ほど強靭にはなれないけど、ピンチの時に、当時の気が狂った思考パターンだったらどうしていたか?を自分に問う。
大抵は困難を打破する為の突破口をもたらしてくれる。
悩みの悪循環に蓋をする役割を持った思考パターンを獲得したに過ぎないし、自分で意識的に蓋をしない時とかは普通に落ち込む。
心療内科、精神科の医師の診断を受けなかったもう1つの理由として、
実は不眠治療の一環で処方された向精神薬(別の薬)を、一時期飲んでいたことがある。
現在飲んでいる人にはわかると思うけど、こっちは思考に蓋をするというよりは「思考に雲がかかる」というもので、単純に脳のスペックが落ちる。
正直、私は個人的に、これを根本的な解決に繋がる治療法だとは思えなかった。
依存性が強く、依存するほど思考に雲がかかり、現実で業績を出すことが難しくなる。
確かに苦しくはなくなるけど「こんなものを飲み続けたら、私は何も生み出せない人間になってしまうな」という焦りから、辛いけどその薬は数ヶ月かけて断薬した。
※医師に断薬について相談した上で、医師の同意と細かな指導の下、徐々に断薬を行いました。不眠治療とかカテゴリ関係なく、向精神薬は依存性が強いものがあるので
自己判断で一念発起して勝手に断薬する行為は非常に危険です。絶対に医師に相談しましょう。
悩み癖を排除できた代償として、明らかに疲れやすくなった。
「作家は一度倒れて意識を失うと最大HPが減る」
みたいなのがよくTwitterに流れてくるのを思い出した。
私は意識を失っていないし、程度は全然軽いけど、この「最大HPが減ってる一度倒れた作家」と、あまりにも似ている点が多い。
皆さんはもっと身体を大事にしましょうね。
でもなんていうか、夢を諦めたくなくて、何かを独りでで成し遂げようとする人は、結局不眠がちになったり、最大HPを減らしがち。
勿論、身を粉にすることは全然美徳だとは思わないし、手軽に爆睡できて全快できる装置とか、早く発明されて欲しいね。
以上、悩み癖を最低な方法で排除した話でした。
皆さんはもっと健康的な人生を送ろうね!